「建築界は今、脱炭素への道を切り拓く大きな転換期に立たされています。
持続可能性と環境への貢献が建築業界においてますます重要視され、私たちの建築プロジェクトが地球環境に与える影響を考える必要があります。」
「題名の記事の冒頭を書いて」とAIに投げたら、上記の様な壮大な書き出しで始まりました。。
実務者としては、
急に2030年とか2050年までとか、具体的な数値目標告げられて、やらされている感が半端ないですよね。
とはいえ、そこに、一定のビジネスチャンスがある事実や、ホントに温暖化が止まれば、頑張ったかいも出てきます。
そこで、
不動産・建築業界の脱炭素に向けた動きの現状をまとめました。
この記事では、
初学者にもわかりやすく、初めて脱炭素に触れる方々に向けて、建築界の脱炭素ムーブメントについて解説します。
そもそも2030年と2050年が目標なのは何故?
パリ協定をおさらい
そもそも、我々が急に突き付けられた、目標期限2030年と2050年。
これは、パリ協定と言われる、枠組みから由来していますので、簡単に振返りましょう。
パリ協定は、気候変動対策の国際的な枠組みです。
2015年にパリで開かれた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で合意されました。
社会の授業で習った、
京都議定書の後継というのが位置づけです。
協定の目標は
「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」
ことです。
その目標に向けて、締結国196か国を対象に、5年ごとに目標の策定・提出が義務づけられています。
そのため、日本も「2030年度にGHG排出量を2013年度に比べ26%削減する」という目標を掲げています。
これが我々の苦労の背景というわけです。
産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力の背景は?
地球温暖化が2度上昇することによる影響は様々なことが言われていますが、代表的なものは下記です。
・異常気象の増加
・海水面の上昇
・生態系の影響
異常気象の増加
温暖化の影響について、最も言及されるものは異常気象の増加でしょう。
すでに、日本でもゲリラ豪雨の増加や台風の巨大化が起きているように、気温上昇が1.5度であっても、多くの被害が発生する可能性があるといわれています。
しかし、1.5度で止めておけば、豪雨のリスクの低減につながることも同時に指摘されています。
また、干ばつの被害も気温上昇が1.5度と2度とでは大きな違いになることも、同時に指摘されています。
海面の上昇
海面上昇の主な原因は、海水の温度上昇による水の膨張と氷河や氷床の融解であると言われています。
1901-2010年の約100年の間に19cm海面が上昇し、21世紀中に最大82cm上昇すると予測されているそうです。
モルディブ諸島・チャゴス諸島・ツバル・キリバス・マーシャル諸島・トケラウなどは
海面上昇により既に被害を受け始めています。
特に「ツバル」の浸水被害の様子は、一度は目にした人も多いでしょう。
生態系への影響
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書によると、平均気温が2℃~3℃上昇すると、平均的には20%~30%の種の絶滅リスクが高まると推定されています。
最新のリスク予測研究では、地球の温度が2℃上昇した場合5.2%、3℃上昇した場合8.5%、4.3℃上昇した場合は16%の生物種が絶滅の危機に瀕する可能性があると試算されています。
建築業界脱炭素取組みの今後のトレンド
「エンボディードカーボンの削減」「LCA実施」がトレンド
脱炭素取組みの背景を理解したところで、建築業界における今後の動きについて記載します。
まず、結論から言うと
「建設中も含めた、建物のライフサイクル全体の削減に向けた、排出量評価・削減方法についての規定や導入が促進される。」と思われます。
理由は、
省エネが進み、運用中のCO2排出量は削減されてきていて、相対的に建設時のCO2排出量の割合が増加しているからです。
一般的に建設分野の排出CO2について、
運用中に排出されるCO2を
「オプショナルカーボン」
建設時に排出されるCO2を
「エンボディ―ドカーボン」
その両方を足した、総量を
「ホールライフカーボン」
と呼んでいます。
上記の通り、削減の目標である「ホールライフカーボン」の内の、「オプショナルカーボン」はこれまでの取組みで、
一定の成果が出てきつつあるが、それでも目標には及ばないので、「エンボディードカーボン」の削減に今後より力を入れていく傾向にあるということです。
このような、
ホールライフカーボンを意識した取り組みを、LCA(Life Cycle Assessmentの略語)
と呼びます。
LCAについての海外の取組み
LCAの取組みは海外の方が進んでいて、今後日本も後追いをしていくことになるので、
現状の海外での動きを確認してみましょう。
海外では竣工前段階のエンボディドカーボンの報告義務化の取り組みも始まっています。
欧州では建設業界のCO2排出量削減に向けた規制が強化され、
2030年までにすべての木材・建材に温室効果係数のデータ開示が求められる方向で進んでいます。
例えば、オランダでは、2013年にオランダ建築法令(Dutch Building Decree)の中で、100㎡を超えるオフィスビル及び全ての住宅について、LCAの実施と申告が義務化されています。
また、イギリスのロンドンでも、都市計画法(The London Plan)の中で、LCAの実施を義務化しており、
確認申請時と竣工時の2回、LCAの申告が求められます。
脱炭素の取り組みに後ろ向きだと考えられがちなアメリカですが、
アメリカは連邦制であるので、各州ごとに省エネに関する政策や条例を設けて、脱炭素に取り組んできました。
また、ワシントンDCを拠点とするUSGBCという団体が設定している「LEED認証」も近年日本での認知度が上がっています。
その中でも、材料項目の中に、EPD集めという項目を設けることでエンボディードカーボンを評価しています。
知っておきたいキーワード「EPD」について
LEED認証にも出てくる「EPD」とは、
建材の原材料採掘から廃棄までの環境負荷を第三者検証したうえで公開する、環境負荷宣言書というものです。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://ecoleaf-label.jp/about/k0sc7i000000005k-att/JapanEPDbySuMPO_Briefing_2304.pdf
LCAのエンボディードカーボン評価をするうえで非常に有用であるため、
LCA実施が拡がることに合わせて、建材にEPDを求める動きが加速していくと予想されます。
最近は、住友林業から環境認証ラベルEPD取得・建物のCO2排出量算定を支援に関するニュースリリースがありました。https://sfc.jp/information/news/2023/2023-02-10-01.html
国内でもエンボディドカーボン排出量算出に関する動きがあり、2024年3月をめどに国の基準を策定予定で進んでいるそうです。https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00461/110100072/
まとめ
脱炭素に取り組むことの背景としては、
以前から言われてきた地球温暖化について、いよいよ切迫した課題として
パリ協定で具体的な数値目標とその更新が求められているからです。
また、今後の建築業界では、これまでの省エネだけではなく、
建材や建設時から発生するCO2排出量を把握し、削減していくことが求められる
ということが分かります。
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