鉄骨造建築では、火災時の高温による鉄骨の強度低下を防ぐため、耐火被覆が必須です。
その中で、ニチアス株式会社が開発したマキベエ(巻き付け耐火被覆)は、施工効率と品質の高さから業界標準として広く採用されています。
物流倉庫用途などの建物はほぼ一強と言ってよい状況です。
そのため、競争原理が働きにくく、価格が下がってこない状況でもあります。
しかし、近年対抗馬と言えるメーカーが海外から参入してきており、今後注目が集まりそうです。
本記事では、耐火被覆の基本的な法律から、マキベエの特徴、そして今後注目すべき技術までを解説します。
1. 耐火被覆に関する法律の基本:建築基準法と国交省告示の要点
鉄骨造の耐火被覆は、建築基準法および国土交通省告示により明確に規定されています。
これらの基準を満たすことで、建物の安全性を確保します。以下に具体的なポイントを示します。
建築基準法に基づく耐火性能の要求
- 主要構造部の耐火性:
柱、梁、床、壁などの主要構造部には、一定の耐火性能を持つ被覆材を施工することが義務付けられています。 - 耐火建築物と準耐火建築物:
- 耐火建築物:主要構造部が「1時間以上の耐火性能」を有するもの。
- 準耐火建築物:主要構造部が「30分以上の耐火性能」を有するもの。
- 地域ごとの規制:
防火地域では耐火建築物が義務付けられ、準防火地域では準耐火建築物の基準が適用されます。
国土交通省告示と認定材料
- 耐火被覆材の認定:
吹付け材やパネルは、国土交通省の認定を受けたものでなければ使用できません。 - 認定番号の確認:
施工前に材料の認定番号を確認し、法規を満たす設計・施工を行う必要があります。
2. マキベエ(機械式吹付け耐火被覆工法)の特徴
現在、鉄骨造の耐火被覆において、マキベエはほぼ一強と言える地位を確立しています。
その理由は、施工効率と品質の高さにあります。以下にマキベエの詳細な特徴を説明します。
マキベエの概要
マキベエは耐熱ロックウールを基材とした巻き付け耐火被覆材料です。
それを鉄骨の柱や梁に巻き付けてピン留めする簡単な工法で特別な技量を必要としません。
見た目は麻袋のようなイメージですが、製品として均一に作られており、そのまま仕上げとされていても物流倉庫や工場などの空間ではほとんど違和感もありません。
マキベエのメリット
- 施工品質の均一性
- 製品を巻き付ける形での施工の為、吹付け材のように厚みにムラが出ることがなく、仕上がりが均一です。
- そのため、耐火性能を確実に確保し、法的基準を満たすことが可能です。
- 省力化と効率性
- 人手不足が深刻な建設業界において、施工が簡易であり労働力の削減・確保が容易なります。
- 手作業に比べて短時間で広範囲を施工できるため、大規模プロジェクトで特に有効です。
- コスト削減
- 長期的に見ると、施工ミスが少なく再施工の必要が減るため、コストパフォーマンスに優れています。
- 法規対応の確実性
- 様々な張り方でも耐火性能を確保できるよう認定がとられており、ALC・PC・耐火断熱パネルとの複合耐火にも耐用しています。
3. 対抗技術の登場と今後の展望
上記のようなメリットにより、物流倉庫用途などの耐火被覆は、ほぼマキベエが業界で圧倒的な地位を確立しています。
そのため、価格が下がりにくくある状況で、平米単価で凡そ2,000円弱程度で、建物が高層化し耐火被覆厚さが厚い場合や、仕口部分など納まりが難しい箇所は、その2~3倍する場合もあります。
しkし、近年海外から同様な性能を有したメーカーを登場しており、注目を集めています。
今後、特に価格低減や環境負荷の軽減を図るため、普及が期待されます。
新たな対抗馬:ROCKWOOL Japan合同会社
マキベエの対抗馬として今後台頭が期待される会社が2021年に設立された「ROCKWOOL Japan合同会社」です。
名前通り「岩綿」を取り扱う会社で、なんとグループとしては80年以上も続いており、本社をデンマークに置くミネラルウール製品メーカーです。
世界第2位の断熱材メーカーともいわれており、ヨーロッパ・北米・南米・オーストラリア・アフリカ等世界各国で事業を展開しています。
製造している製品は、見た目はほぼマキベエと同じで、施工性もほとんど同じです。
原材料が、マキベエは高炉から出るスラグであるのに対して、ROCKWOOL社は玄武岩等の天然石から製造しています。
綿が天然石から作れるとは驚きですよね。
具体的な製品名は「Tekkaroll」です。下がカタログにある写真です。マキベエと見分けがつかないですね。
今後の展望
世界規模の断熱材メーカーの参入により、今後、国内最強のマキベエと戦っていくことになるでしょう。
現在は、日本の法律での耐火認定を取得のため、試験を繰り返している状況のようであり、本格的な参戦の準備中といった様相です。
使用される建物用途を考慮すると、法規を遵守できていれば、耐火性能の微妙な良し悪しよりは、価格で採否を決することが多いでしょう。
グループの資金力はとてつもないパワーがあるため、今後、マキベエを価格面で上回り、シャア獲得を図ってくるものと考えられます。
消費者側としては、安く・良いものと考えますが、「断熱材の黒船」をどこまで受け入れるのか?という、より大きな目線での判断も必要になってくるでしょう。
4. まとめ
- 鉄骨造建築では、火災時の高温による鉄骨の強度低下を防ぐため、耐火被覆が必須。
- ニチアス株式会社のマキベエ(巻き付け耐火被覆)は、施工効率と品質の高さから業界標準として広く採用されている。
- 物流倉庫用途などの建物では、ほぼ一強の状況であり、競争原理が働きにくく価格が下がらない。
- 近年、海外からの対抗馬メーカーが参入しており、今後注目が集まりそう。
- 耐火被覆に関する法律は建築基準法と国土交通省告示により規定されており、主要構造部には一定の耐火性能を持つ被覆材の施工が義務付けられている。
- マキベエは耐熱ロックウールを基材とした巻き付け耐火被覆材料で、施工品質の均一性、省力化と効率性、コスト削減、法規対応の確実性が特徴。
- 新たな対抗馬としてROCKWOOL Japan合同会社が登場し、今後の展望として価格低減や環境負荷の軽減が期待される。
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