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健康第一!あなたが知っておくべきアスベスト建材除去の6ステップ

アスベスト(石綿)は、かつて建材として広く使われていましたが、その健康への悪影響から現在では規制されています。

特に解体工事においては、アスベストを適切に扱わなければ、作業者や周辺住民の健康を害するリスクがあるため、法律に基づいた慎重な対応が求められます。

本記事では、理解しやすいように、アスベスト処理の流れを6つのステップ解説します。


目次

アスベストに関する基本事項の理解

その性質と健康リスク

アスベストは、天然の繊維状鉱物で、断熱性や耐火性に優れているため、過去には断熱材・耐火材として幅広く使われてきました。

しかし、その繊維が空気中に飛散し、吸い込むと肺がんや中皮腫といった深刻な病気を引き起こすリスクがあります。

こうした背景から、日本では2006年9月以降に全面的な使用が禁止され、既存の建物に残るアスベストの除去が重要な課題となっています。

アスベストが含有されている建材例

下記がアスベストが含有されている可能性のある現在の例です。

  • 吹付け石綿:鉄骨の耐火被覆や断熱目的で使用されました。
  • 石綿スレート板:屋根材や外壁材として広く用いられました。
  • 石綿セメント板:内装材や外装材として使用されました。
  • 石綿セメント管:上下水道や排水管として使用されました。
  • ビニル床タイル:一部の製品にアスベストが含まれていました。
  • 石綿含有接着剤:床材や壁材の接着に使用されました。
  • シーリング材:建材の隙間を埋めるために使用されました。
  • 断熱材:ボイラーや配管の断熱に使用されました。
  • 耐火被覆材:建物の耐火性能を高めるために使用されました。

アスベストに関連する理解しておくべき法律と規制

アスベストの取り扱いは、以下の複数の法律で規制されています。

特に、解体工事においては「特定粉じん排出等作業」として厳しい基準が設けられており、法的手続きを踏む必要があります。

労働安全衛生法(労安法)

労働者の安全と健康を確保するための基本法であり、アスベストに関しても以下の規制を設けています。

  • 石綿障害予防規則(石綿則): アスベストの取り扱いに関する詳細な規定を定めています。 厚生労働省
  • 事前調査の義務化: 建築物の解体・改修時には、アスベストの有無を事前に調査し、その結果を記録・保存することが義務付けられています。
  • 作業基準の遵守: アスベスト除去作業時には、適切な防護措置や作業手順を遵守する必要があります。

大気汚染防止法(大防法)

大気中への有害物質の排出を規制する法律で、アスベストに関しても以下の規制を行っています。

  • 特定粉じんの規制: アスベストを特定粉じんとして指定し、その排出や飛散を防止するための措置を義務付けています。
  • 事前調査結果の報告義務: 2022年4月1日から、解体・改修工事前のアスベスト事前調査結果を自治体に報告することが義務化されました。

廃棄物処理法(廃掃法)

廃棄物の適正な処理を定める法律で、アスベスト廃棄物に関しても以下の規制があります。

  • 特別管理産業廃棄物: アスベスト廃棄物は特別管理産業廃棄物に分類され、厳格な処理基準が設けられています。
  • 適切な処理・処分: アスベスト廃棄物の収集、運搬、処分には専門的な知識と許可が必要です。

建築基準法

建築物の安全性を確保するための法律で、アスベストに関しても以下の規制を行っています。

  • 使用禁止: 2006年以降、アスベストを含む建材の使用が全面的に禁止されています。
  • 既存建築物の対応: 既存の建築物に使用されているアスベストについては、適切な管理や除去が求められています。

事前調査:アスベスト含有建材の確認

解体工事を始める前に、建物にアスベスト含有建材が使用されているかどうかを調査する必要があります。この事前調査は、飛散を防ぐための重要な工程です。

調査の3ステップ

  1. 書面調査:設計図や建築確認申請書、改修履歴などを調べます。
  2. 現地調査:実際の建物を目視で確認し、アスベストの使用箇所を特定します。
  3. 分析調査:必要に応じて、建材のサンプルを採取し、専門機関で成分を分析します。

調査結果は記録として保存し、作業関係者と共有することが必須です。記録は3年間保存が義務づけられています

以下の点に注意して記録を作成します。

  • 使用箇所と種類:図面を使って明示
  • 判断根拠:メーカー資料や分析データを添付
  • 調査者の情報:氏名、所属、責任範囲の明示

建築物(建築設備を含む)の解体・改修工事を行う場合、令和5年10月1日以降は、有資格者(建築物石綿含有建材調査者等)による事前調査の実施・対象工事に関する報告が義務化されています。

事前調査を行うことができる「建築物石綿含有建材調査者等」には、以下の4種類の資格があります。

  • 特定建築物石綿含有建材調査者
  • 一般建築物石綿含有建材調査者
  • 一戸建て等石綿含有建材調査者
  • 日本アスベスト調査診断協会(2023年9月30日までの登録)

因みに、2006年9月以降はアスベストの使用が禁止されているため、基本的には含有されている建材がないですが、調査内容に、建設年の確認も含まれていますので注意をしましょう。工事前の必要な届け出

アスベストを含む建築物の解体・改修工事を行う場合、事前に

・大気汚染防止法に基づき、特定粉じん排出等作業実施届出書を都道府県知事

・労働安全衛生法に基づき、作業計画を労働基準監督署

事前に届出必要があります。

対象となる特定建築材料には先ほど学んだ以下が含まれています。

  • 石綿含有吹付け材、断熱材、保温材、耐火被覆材
  • スレート板や仕上塗材など、成形板を含む製品

提出期限: 工事開始の14日前まで

近隣住民への説明:リスクコミュニケーションの重要性

解体工事では、アスベストに関する情報を周辺住民や関係者に適切に伝えるリスクコミュニケーションが不可欠です。

不安を解消し、工事への理解と協力を得るためには、次のような活動が効果的です。

  1. 工事前説明:アスベスト含有建材の有無、除去方法、工事期間について事前に説明します。
  2. 工事中の情報提供:作業状況や飛散防止対策を随時報告し、透明性を確保します。
  3. 意見交換の場を設ける:住民の質問や懸念に丁寧に対応することで信頼関係を築きます。
  4. 説明会や見学会の実施:必要に応じて、現場見学会などを開催し、理解を深めます。

いよいよ解体工事: アスベスト除去の具体的な方法

解体工事におけるアスベスト除去では、作業中に石綿繊維の飛散を防ぐことが最優先です。

アスベストのレベル分け

アスベスト(石綿)は、石綿障害予防規則(石綿則)に関連する技術上の指針やマニュアルにおいて、アスベスト含有建材の飛散性や発じん性に応じてレベル1からレベル3までの分類されています。

厚生労働省:石綿障害予防規則などの関係法令について

その飛散性や作業時の発じん性に基づき、以下の3つのレベルに分類されます。

レベル1:高発じん性

  • 対象建材: 吹付け石綿
  • 特徴: 最も発じん性が高く、除去作業時に大量の石綿繊維が飛散する可能性があります。
  • 対策: 作業場所の完全な隔離、高性能の防じんマスクや保護衣の着用など、厳重なばく露防止対策が必要です。

■レベル2:中発じん性

  • 対象建材: 石綿含有保温材、断熱材、耐火被覆材など
  • 特徴: レベル1に次いで発じん性が高く、除去作業時に石綿繊維が飛散するリスクがあります。
  • 対策: レベル1に準じた高いばく露防止対策が求められます。

■レベル3:低発じん性

  • 対象建材: 石綿含有成形板、仕上塗材など
  • 特徴: 発じん性は比較的低いものの、破砕や切断などの作業時には石綿繊維が飛散する可能性があります。
  • 対策: 湿式作業を基本とし、発じんレベルに応じた防じんマスクの着用が必要です。

これらの分類は、作業時の安全対策や法的規制の基準となります。

特に、レベル1およびレベル2の建材を扱う際には、厳重な安全対策が求められます。

解体作業の流れ

それぞれのレベル状況に応じて、以下のような方法を選択します。

作業区域の設定と隔離

  • 養生の設置: 作業区域をビニールシートや防音パネルで囲い、外部へのアスベスト飛散を防止します。
  • 負圧装置の設置: 作業区域内を負圧に保つことで、アスベスト繊維の外部への漏出を防ぎます。
  • 出入口の管理: 作業員専用の出入口を設け、エアシャワーや粘着マットを配置して、作業員の出入り時にアスベスト繊維の持ち出しを防止します。

作業員の防護

  • 防護服の着用: 使い捨ての防護服を着用し、作業後は適切に廃棄します。
  • 防じんマスクの着用: 高性能の防じんマスク(P3フィルターなど)を着用し、呼吸器系へのアスベスト繊維の侵入を防ぎます。
  • 手袋・ゴーグルの着用: 手袋やゴーグルを着用し、皮膚や目への接触を防止します。

アスベスト含有建材の湿潤化

  • 飛散防止剤の散布: 除去対象の建材に飛散防止剤を散布し、繊維の飛散を抑制します。
  • 水の噴霧: 作業中も適宜水を噴霧し、粉じんの発生を抑えます。

アスベスト含有建材の除去

  • 手作業による除去: スクレーパーやヘラを使用して、慎重に建材を剥がします。
  • 工具の使用: 必要に応じて、低速回転の電動工具を使用しますが、粉じんの発生を最小限に抑える工夫が求められます。
  • 除去物の梱包: 除去した建材は、即座に密閉可能な袋や容器に入れ、二重に梱包します。

作業区域の清掃

  • 湿式清掃: 作業区域内を湿式で清掃し、残留するアスベスト繊維を除去します。
  • HEPAフィルター付き掃除機の使用: 乾式清掃が必要な場合は、HEPAフィルター付きの掃除機を使用します。

作業員の退場と洗浄

  • 防護服の脱衣: 作業区域内で防護服を脱ぎ、適切に廃棄します。
  • シャワーの使用: 可能であれば、作業後にシャワーを浴び、身体に付着した繊維を洗い流します。

廃棄物の処理

  • 特別管理産業廃棄物としての処理: アスベスト廃棄物は、特別管理産業廃棄物として、許可を受けた処理業者に委託し、適切に処理します。
  • マニフェストの管理: 廃棄物の処理状況を確認するため、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を使用し、適切に管理します。

作業後の確認と報告

目的: 除去作業の完了を確認し、関係機関へ報告します。

  • 取り残しの確認: 資格を有する者が目視で取り残しがないことを確認します。
  • 報告書の作成: 作業内容、結果、写真などをまとめた報告書を作成し、所轄官公庁へ提出します。

注意点: 報告書は3年間保管する義務があります。

以上が、解体工事におけるアスベスト処理の一般的な流れです。各工程での詳細な手順や注意点については、専門業者や関係機関の指導を受け、法令を遵守して進めることが重要です。

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まとめ:若手技術者へのメッセージ

アスベスト処理は、法令遵守、安全対策、そして住民への配慮が必要な責任の重い業務です。

しかし、適切な手順を踏むことで、安全かつ効率的な作業が実現できます。

若手技術者として、知識をしっかり身に付け、現場での適切な判断を下せる力を養うことが重要です。

今後の解体工事では、最新の情報や技術を取り入れ、常に安全第一で作業を進めていきましょう。

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