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建築現場での失敗から学ぶ:耐力壁の配筋ミスが招いた2000万損失の構造欠陥

目次

はじめに

建築における設計や施工のミスは、構造物の安全性に直接影響を与えます。

特に、耐震性が求められる日本では、適切な施工と厳格な品質管理が不可欠です。

この記事では、ある自治体が国の補助金を受けて建設した汚水処理施設における施工ミスについて取り上げます。

この事例では会計監査員から耐震壁の配筋について指摘を受けて、補助金2000万円が無駄になってしまいました。

この事例から、構造技術者でないと意外と気が付けない耐力壁の配筋における問題点とその対策について学びます

着目ポイントは簡単で、しかも実際の現場で多くみられるので効果が非常に高いです。しっかり学習しましょう。

概要と問題点

対象となった管理棟は、高さ7.9m、床面積134m²の鉄筋コンクリート(RC)造平屋建てで、壁式構造が採用されています。

竣工後の会計検査院の調査により、構造的に安全ではないことが判明し、約2000万円の工事費が無駄になったと指摘されました。

主な問題は、耐力壁端部の配筋に関するものでした。

耐力壁の配筋ミスの詳細

耐力壁は、建物の水平力(地震力など)に対抗するための重要な構造要素です。

本事例では、耐力壁の端部に設けられたU字形筋(U字形に加工された鉄筋)の配置方法に重大なミスがありました。

  1. U字形筋の配置不良
    U字形筋は通常、縦方向の鉄筋の外側に配置されるべきものです。しかし、この管理棟ではU字形筋が縦方向の鉄筋の内側に配置されていました。この配置ミスにより、U字形筋が横筋と力を十分に伝達し合えず、地震時に機能しない可能性が高まりました。
  2. 重なり長さの不足
    さらに、U字形筋と横筋の重なり長さが不十分であったため、両者が一体となって機能することができませんでした。これにより、会計検査院は、耐力壁の半数以上が地震時に必要な性能を発揮しないと判断しました。

耐力壁の役割と設計基準

耐力壁は、地震時に建物に加わるせん断力に対抗します。その際に端部には強い圧縮力が作用する箇所があります。

U字形筋は、圧縮力を受けた縦筋が外側にはらみだすことを防ぐ役割を持っています。

耐力壁の効果を最大限に引き出すためには、以下のような設計・施工基準が守られる必要があります。

  • 鉄筋の配置と重なり:U字形筋は縦方向の鉄筋を外側から包み込むように配置し、横筋との重なり部分を十分に確保する必要があります。
  • 鉄筋の一体化:横筋は、耐力壁の全周にわたって縦筋の外側を巡らせるのが理想であり、これによって一体化した構造体が地震力に効果的に抵抗します。

実際の会計監査員による報告はこちらのHPです。平成11年度決算検査報告

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欠陥の原因と対策

今回の欠陥の原因は、主に工事監理者の確認不足や施工図のミスにありました。

鉄筋の継ぎ手や定着方法、位置などは設計条件や施工条件によって異なるため、事前の打ち合わせが非常に重要です。以下のような対策が必要です。

  1. 施工図の確認と適切な配筋
    設計図と現場での施工図が一致しているかを十分に確認することが重要です。特に鉄筋の配置や重なりについては、現場での条件に応じて調整が必要です。
  2. 監理者と施工者の連携
    工事監理者と施工者の間で事前に詳細な打ち合わせを行い、施工中も定期的なチェックを行うことで、施工ミスを未然に防ぐことができます。
  3. 適切な補強方法の選定
    万が一、施工後に欠陥が発見された場合、適切な補強方法を選定することが重要です。本事例では、耐力壁に鋼板を巻き付ける補強が行われましたが、これは応急処置に過ぎず、根本的な解決には至っていません。

施工の教訓と今後の展望

この事例は、耐力壁の配筋ミスが構造物の安全性に大きな影響を与えることを示しています。

建築技術者は、設計・施工の段階で常に最新の基準に従い、品質管理を徹底することが求められます

また、施工ミスが発生した場合でも、迅速かつ適切な対応が重要です。

さらに、現場での施工管理を強化し、設計者と施工者の間のコミュニケーションを密にすることで、同様のミスを防ぐことが可能です。

特に、南海トラフ地震が懸念される日本においては、こうした対策がますます重要になってくるでしょう。

結論

建築物の安全性を確保するためには、細部にわたる設計と施工の正確さが求められます。

今回の事例は、配筋ミスという小さなミスが大きな問題に発展する可能性を示唆しています。

技術者にとっては、こうした事例ひとつひとつから学び、現場での品質管理を徹底することが、今後のキャリアにおいて重要なスキルとなるでしょう。

正しい施工と監理の重要性を再確認し、今後の建築現場での実践に役立ててください。

参考文献

この記事は、「設計ミスを防ぐ建築実務の勘所 Kindle版」を参考に作成しました。

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