脱酸素社会・持続可能なエネルギー源への最初の取り組みとして選択される太陽光発電。
私たちの生活においても比較的当たり前に取り入れられるようになりました。
一方、これまでの経験を通して、設置方法について見直しが必要な事実もわかってきています。
しkし、既に設置されたものへの波及も大きいためか、あまり取り上げられないものもあります。
この記事では、設置時に考慮すべき重量制限や風荷重などの技術的な側面についても深掘りし、太陽光パネル設置を検討しているあなたにとって最適な選択をサポートします。
この記事を読めば、意外と知らない太陽光パネルの勘所がわかります。
全てに対応する必要もないかもしれませんが、
知っておけば太陽光パネル設置の安全性を高めることができます!
屋根上太陽光パネル設置方法の種類
屋根上に太陽光パネルを設置する方法には大きく2種類があります。
◆直置き式
一般住宅や折版屋根などに金物で緊結して設置する(写真左)
◆架台方式
陸屋根(RCスラブ)の上に基礎を作り、その上に鉄骨で架台構築したうえで設置する(写真右)
どちらを採用するかは、基本的に建物の屋根が、陸屋根であるか否かで決まります。
新築時でも、太陽光パネルを乗せるためだけに、屋根の形式を決めることはあまりないので、建物計画に沿った設置方法になると考えてよいでしょう。
太陽光パネル設置時の注意点
どのくらいの重量を見込めばいい?
太陽光パネルを設置する場合は、その分の重量が増えるので、建物側の安全検証が必要になります。
その際に、どの程度の重量を見込むのが妥当かというのが悩みどころです。
実は、太陽光パネルにはいくつかメーカーがあり、製品によって重量が異なります。
ペンギンのこれまでの経験では、直置き式の場合、太陽光パネルと金具までを含めても20kg/㎡程度です。
なので、少し余力を見て、25kg/㎡程度で見込むのが妥当な線だと考えています。
(20kg/㎡でも大丈夫だとは思うけど。)
架台方式の場合は、これに、RC基礎と鉄骨架台の重量が加わるので、まったくオーダーが異なります。
架台方式の場合は、個別に検討が必要になるので、計画時の変更などはそれなりに時間が必要になることを知っておきましょう。
取り付けるのに有利な位置はある?
ソーラーパネルの設置時に重量の他に気を付けることは、「風荷重」です。
屋根に加わる風圧力は屋根の形や勾配、同じ屋根でも位置によって大きく異なります。
特に陸屋根の隅角部や周縁部、棟部は、屋根中央に比べて大きくなることが分かっています。
そのため、ソーラーパネルの設置は可能な限り、中央部に設置することが望ましいです。
ソーラーパネルの不都合な真実?
直置き方式の風荷重の考え方
架台方式は、鉄骨架台を作るので、発電効率の高い角度をつけて構築できます。
その分、風の影響を受けやすいので、そのことも考慮されて設計されます。
一方、直置き方式については、屋根に貼り付けているような状態なので、一般的には屋根の一部として考えられてきました。
しかし、太陽光と屋根との間に風が入り込み、通常の屋根荷重に生じる風圧力に加えて、ソーラーパネルにも吹上げの風圧力が作用するとの研究結果があります。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kazekosymp/23/0/23_271/_pdf
つまり、屋根とソーラーパネルの風圧力をダブルカウントして検討するべきということです。
新築時であれば設計荷重に考慮できますが、既存建物の場合、仮に検討により建物側の補強が必要になったとしても、
工事の実現性や経済面から補強工事ができないケースが出てくるでしょう。
また、研究自体は以前からありますが、基準化される動きはなく、構造設計者でも知らないことが多いと思われます。
しかし、JSCA(日本構造技術者協会)から出版されている書籍にも引用されており、無視はできません。
ぺんぎんは、このソーラーパネル側の吹上げ力により、屋根やパネルが吹き飛ぶような大惨事は想定していませんが、
部材の変形による漏水などは起こりえる可能性があると判断しています。
なので、直置き方式でソーラーパネルを設置する場合は、
ダブルカウントの検討をしたうえで、漏水等のリスクが伴うことを説明するようにしています。
通常の規格では猛烈な台風に耐えられない?
太陽光パネルの耐風圧は、「JIS C 8990」で定められています。
耐風圧荷重は2,400Paに耐えうる設計となっています。
風速に換算すると、毎秒64メートルになります。
これは、「猛烈な台風」の区分となる、風速54m/s以上を大きく超えた数値です。
なので、この要件を満たしていれば、十分な強度があると考えられます。
しかし、問題はこの2400Paの性能を確認する試験方法が、
「猛烈な台風」が引き起こす「突風」による風圧に対応していないことです。
太陽光パネルの性能評価の規格である「IEC61215」によると、
突風を考慮する際の基準とする、安全係数3の風圧に換算すると
現状の試験で求められいる2400Paという圧力は風圧36m/s程度である。
そのため、太陽光パネルを選定する際には、現状規格よりも高い圧力での試験が実施されていることを確認するべきでしょう。
特に、「突風」までを対象にするのであれば、7200Pa程度で限界値を確認しているような試験を行っているかがチェックポイントです。
【脱炭素建築への始まり】LCAとエンボディードカーボンの重要性をわかりやすく解説 (archi-skills-note.com)
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