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土砂災害を避ける土地選びに大切なたった1つのこと

日本では、豪雨や台風による土砂災害が毎年のように発生し、多くの人命や財産が失われています。

新しく自宅や事業用の建物のを建てる際には、土地選びに悩まされることも多いです。

特に、最近は新しい建物が土砂に襲われることが多く報道されています。

なぜそのような被害が繰り返されるのか、多くの人々が疑問を抱いていると思います。

本記事では、近年発生した災害事例を交えながら、土砂災害の原因と対策について考察していきます。

目次

なぜ新しい建物が被害を受けるのか

危険な場所への開発と伝承の軽視

三重県の旧宮川村(現在の大台町)では、2004年の台風21号により大規模な土砂災害が発生しました。

この際、被害を受けた建物の多くが比較的新しい住宅でした。なぜ新しい建物が災害に襲われたのでしょうか?

旧宮川村には「尾先、谷口、堂の前」といった言い伝えがあり、これらの場所は古くから災害の危険地とされていました。台風21号で被害を受けた住宅は、この伝承に逆らう形で建設されていました。

※堂の前とは、

結果的にかもしれませんが、伝承に背くことで、新しい建物が土砂に襲われるという悲劇が起こったのです。

同様の事例は長野県の南木曽村でも見られます。危険な地域に住宅が建設されることで、災害リスクが高まってしまうのです。

伝承や過去の教訓を軽視せず、それに基づいた適切な場所選びがいかに重要かがわかります。

土石流の特徴と避難の難しさ

土石流は、山腹から大量の土砂や石が一挙に流れ下る現象で、特に降雨のピーク時に発生することが多いです。

土石流の移動速度は速いため、避難が間に合わないことも多々あります。

山間部に位置する集落が被災することが多く、災害が発生した際の被害は甚大です。

また、土石流は一過性の現象であるため、次にいつ発生するかを予測するのは非常に困難です。

これが、地域住民や行政が災害への備えを十分に行えない理由の一つとなっています。

具体的な事例

前の事例以外にも、下記のように、令和になってからも毎年のように豪雨による・土砂災害が発生しています。

そして、その多くの場所で、災害に関する古くからの伝承が伝えられていました。

令和5年7月の九州北部豪雨

2023年7月、福岡県、佐賀県、大分県を中心に豪雨が襲い、特に福岡県久留米市では、住宅地に土砂が流れ込み、多くの家屋が被害を受けました。

この豪雨では、地元の防災ダムや河川堤防も機能しましたが、それでも被害を完全に防ぐことはできませんでした。

豪雨による被害は、特に川沿いや山の斜面に位置する住宅に集中し、危険区域と知られていた場所に新しく建設された住宅が土砂の流入により大きな被害を受けました。

https://www.mlit.go.jp/river/sabo/jirei/r5dosha/230823_saikan_sabo_uchiuraguchitanigawa.pdf

九州北部では、享保5年(1720年)にも大規模な豪雨が発生し、耳納連山で大規模な土石流が発生しました。この災害の記録は、うきは市安富の西見家の古文書「壊山物語」に残されています

令和4年8月の静岡県熱海市土石流

2022年8月、静岡県熱海市伊豆山地区で発生した土石流では、多くの住宅が流され、甚大な被害が生じました。

この災害は、過去に同じ地域で発生した土砂災害と重なる部分が多く、伊豆山地区には古くから土砂災害の危険性が指摘されていました。

しかし、新たに建設された住宅や開発が行われたことで、リスクが高まってしまったのです。

https://www.mlit.go.jp/river/sabo/jirei/r5dosha/230823_saikan_sabo_uchiuraguchitanigawa.pdf

熱海市伊豆山地区では、過去にも土砂災害が発生しており、地域の古文書や住民の言い伝えにより、その危険性が伝えられていました

令和3年7月の広島県豪雨

2021年の豪雨では、広島市内で土砂崩れが多発し、特に安佐南区では、住宅地に土砂が流れ込み、大規模な被害をもたらしました。

この地域でも、過去に土砂災害が発生していたことが伝承されていたにもかかわらず、新しい住宅地の開発が進められていました。

その結果、多くの家屋が被害を受けることになりました。

広島県では、昭和20年の枕崎台風や昭和42年の豪雨など、過去にも大規模な土砂災害が発生しており、地域の石碑や文書にその記録が残されています

防災対策の現状と課題

砂防ダムとその限界

土砂災害に対する主要な対策の一つとして、砂防ダムが挙げられます。

砂防ダムは、土石流や土砂崩れを防ぐために設置される施設であり、被害を軽減する役割を果たします。

しかし、近年の豪雨はかつてない規模で発生しており、砂防ダムの堆砂能力を超える事態が発生しています。

例えば、令和5年の九州北部豪雨の際、砂防ダムが満杯になり、これ以上の土砂を抑えられない状況が生じました。

さらに、令和4年の熱海市の土石流災害でも、砂防ダムの効果が限定的であったことが指摘されています。

このように、砂防ダムには経済的、技術的な限界があるため、それだけに頼ることはできません。

過去の教訓と伝承を活かす

過去の災害の教訓を正しく継承することが、土砂災害から身を守るために重要です。

多くの地域では、地名や言い伝えとして災害の危険性が代々伝えられてきましたが、現代の開発がその教訓を無視することが多々あります。

例えば、広島県や静岡県の事例でも、過去に災害が起こった場所で再び住宅が建てられた結果、同じ場所で再度大規模な被害が発生しました。

これらの教訓を無視せず、地域住民や行政が一丸となって災害対策に取り組むことが必要です。

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自ら避難して命を守る

災害から命を守るためには、適切な避難が不可欠です。

令和3年7月、岐阜県八百津町で発生した豪雨災害では、自らの判断で早期に避難した夫婦が命を守りました。

妻が異常な豪雨に胸騒ぎを覚え、夫と共に自家用車で親戚の家に避難した結果、土石流によって自宅は倒壊しましたが、命は助かりました。

このように、地域の伝承や気象情報に基づいて早期避難することが、被害を最小限に抑えるための最も有効な手段です。

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終わりに

土砂災害は、自然災害の中でも特に予測が難しく、避難が間に合わないことが多い災害です。

しかし、過去の教訓や地域の伝承を活かし、災害リスクを正しく理解し、適切な避難行動を取ることで、多くの命を守ることができます。

また、砂防ダムや堤防などのハード対策に頼るだけでなく、地域の人々が協力し、独自の警戒避難体制を整備することが求められます。

災害の再発を防ぐためには、今後も地域固有の災害リスクを認識し、それに基づいた行動を取ることが重要です

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参考文献

この記事は、「設計ミスを防ぐ建築実務の勘所 Kindle版」を参考に作成しました。

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