小さな頃少しだけ習い事でやっていたピアノ。
いつか、我が家でも娘がピアノをやりたいと言い始める可能性もなくはない。
いや、むしろ、一度はやりたいと言う可能性が高い。
そこで、ピアノど素人、建築プロのペンギンが、
ピアノは家のどこに置くのが良いのか建築屋さん目線で考えてみました。
この記事を読んで合理的な設置方法を学びましょう。
結論と注意点
設置を考えるうえで、
「サイズ」「照度」「温度・湿度」「騒音」「重量」を考慮しました。
そのうえでの良い設置場所の結論は、
「窓は背にしないコンセントの近い部屋内壁沿い。」です。
全てを満足する必要はないと思いますが、下の詳細を読んで取り入れられるものを参考にしてください。
また、グランドピアノを木造家屋に設置する場合、建物的に要注意であることがわかったので、その点も参考にしてください。
ピアノのサイズと種類
まず、一口にピアノと言っても、グランドピアノ・アップライトピアノ・電子ピアノ等と種類があります。
電子ピアノを置くために建築的に検証すべき項目はなさそうなので、今回は、グランドピアノとアップライトピアノを対象にしたいと思います。
グランドピアノとアップライトピアノの大まかなサイズがこちらです。
グランドピアノはやはり大きいですね。
部屋における人いるのか?と思ってしまいます。
また、アップライトピアノも間口はグランドピアノとほぼ同じで、かなりスペースを必要とします。
やはり、広いとは言えない部屋を有効活用して、合理的にピアノを置くには検証が必要です。
しかし、自分で寸法測って、図面等を描いて検討するのは慣れない方には大変です。
調べてみると、各ピアノメーカーさんで設置のためのツールを公開してくれていました。
調べた所では、ヤマハさんの公開してくれている「部屋置きシミュレーション」が大まかな設置検討にはいいのではないかと思いました。
部屋サイズと家具のサイズを指定して、大まかに設置し、どのあたりが良さそうか検討できます。
また、各社さんARによる設置検討ツールも作ってくれているようで、それも試しに使ってみました。
正直な感想は「まだまだ微妙!」
イメージをつかむうえでは有用ですが、ピアノオブジェクトのサイズが部屋の寸法に自動フィットするわけではなく、手動で合わせるため、「果たして実際にこの寸法で設置されるのか?」というのが疑問です。
なので、あくまで部屋の雰囲気とマッチするかを検証するためのツールで、設置検討用としては参考程度にするのがいいでしょう。
しかも、OSが最新に対応していなかったり、andorid用のアプリがなかったりと、積極的に開発を進めていない印象でした。
照度
次に、個人的に盲点だったのが照度。
演奏中は譜面を見るため、暗いのはNGらしいです。
照明や窓を背にしてしまうと、自分の影で譜面が読みづらくなってしまうことが考えられます。
特に、西日は部屋の奥まで来るので、気を付けて設置場所を決めましょう。
アップライトピアノの場合は、上に照明を置く手段も有効だと思います。
コンセントとの位置関係
自動演奏してくれる機能があるピアノの場合は、電源を取る必要性が出てきます。
また、照明を近くに置きたい場合もあると思うので、コンセントはできれば近い方がいいでしょう。
一方で、コンセントをピアノで隠してしまうのは避けましょう。
ピアノの後ろを掃除するのは難しく、埃だまりになりやすいです。
この場合火災リスクもあるので、防火の観点からも、ピアノの後ろにコンセントがこないようにしましょう。
温度と湿度
ピアノは木材で作られているため、温度や湿度の変化に敏感だそうです。
特に、湿度変化は音質の低下につながるとのこと。
だとすると、部屋の中で比較的湿度が安定している場所に置きたいですね。
ただ、湿度が安定している場所を特定するのは、部屋の間取りや設備状況により異なるので専門家でないと判断が難しいです。
逆に、「ここはやめておいた方がいい」という場所は、窓際(特に北側)です。
理由は、結露が発生し、その部分の湿度変化大きいためです。
また、鉄筋コンクリート造の建物の外壁はコンクリートでできていますが、新築されて数年は少しずつコンクリート内の水分が外へと出てくるため、相対的に湿度が高い傾向にあります。
スペースが許すのであれば、外壁側を避けるといいでしょう。
騒音対策
ピアノは大きな音が出る楽器であるため、騒音はどうしても気になります。
特に、マンションなどの場合は、隣人とのトラブルにもつながる可能性もあります。
音は、物体(空気を含む)を振動させて伝達されます。
特に、躯体などの固いものに伝達されると、すごく効率よく伝達されてしまいます。
その為、隣住居との戸境壁付近に置くことはオススメしません。
どうしても、間取り上仕方ない場合は、演奏時間を調整するなど、運用でカバーしましょう。
重量
最後に、重量に関する検証です。下の表が重量比較表です。
表から、単位面積当たりの重量で比較すると、アップライトピアノの方がグランドピアノより2倍重いことになります。
住宅用の設計用積載荷重は180㎏/㎡なので、意外にもグランドピアノが設計用積載積載荷重以下になります。
しかし、ピアノは脚部によって床の上に載っています。つまり、点荷重として床面に作用しています。
アップライトピアノの場合、1脚当たり約70kg で大人が片足立ちした程度で問題ありません。
一方、グランドピアノの場合、1脚当り約150kgです。
この場合、木造の床の場合注意が必要です。
木造の床の作りには、「根太工法」や「剛床工法」などの種類がありますが、
根太工法は下記のように床を根太という部材で支えています。
根太は910mm間隔にある大梁や大引に、300mm又は450mm間隔で配置されます。
また、部材の寸法は45×45mm又は45×60mm程度の部材が多いです。
しかし、仮に根太の中央部分に、150kgの集中荷重がかかると、下記の通り根太の曲げ応力度がNGになってしまいます。
ピアノ脚部集中荷重
$1470N (150×9.8)$
最大曲げモーメント
$Mo=1/4×1470×0.91=334km$
根太の断面係数
$Z=4.5×(6^2/6)=27cm3$
根太の曲げ応力度
$σ=334×100/27=1,237 > 930 N/cm2 ・・・NG$
対策としては、
・床補強する
・ピアノの脚部分に鉄板等、荷重分散できるものを敷く
などが考えれますが、床補強には費用がかかるし、大梁の上に脚がくるように設置する工夫方法も考えられるので、一度身近な建築専門家や住宅の設計者に個別相談されるのが良いでしょう。
因みに、鉄筋コンクリート造の床の場合は、150kgの集中荷重でも問題になることはないでしょう。
まとめ
音や湿気のことを考えると、外壁側に置くよりは、内壁側に設置することが望ましいです。
一方、内壁側に設置すると、窓を背に場合が多いので、ご自身が演奏される際の日の入り方なども考慮すると、手元が暗くならない快適な演奏ができるようになるでしょう。
最後に、木造建築の場合は、一度専門家に相談することをオススメします。
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