不動産投資や建物の耐震性能を評価する時に使われる「地震PML」。
定義も曖昧で、ネットで解説を見ても良くわからないですよね。
結局何を言っていて、目安はどのくらいなのかを、構造一級建築士で技術士なペンギンが分かりやすく解説します。
これを読めば、地震PMLをどのように使えば良いか分かるようになります。
地震PMLとは
地震PMLとは建物の新築時の建設費に対する地震で受ける可能性のある被害額の割合です。
例えば、新築時の建設費が100億円の建物が、地震で被害を受けて、補修に最大10億円かかると予想される場合の地震PMLは10億円÷100億円=10%となります。
被害による補修費用の算出方法は、評価する会社などのノウハウによりますが、以下の3点を加味します。
建設地の地震発生確率
建設地の地盤状況
建物の耐震性能
建設地の地震発生確率は、
過去に発生した地震の地震動データを収集し、建設地周辺の地震活動の解析し、震源断層の位置や地震の発生頻度を評価します。 地震の発生回数を評価するイメージです。
建設地の地盤状況
地盤調査によって得られた地盤情報を用いて解析し、建設地地盤の振動特性や地震波の速度などを評価します。 これにより、建物に入力される地震の強さを評価しているイメージです。
建物の耐震性能
設計図書(構造計算書や図面)から建物の耐震性能を評価します。これにより、建物の地震に対する抵抗力を評価しているイメージです。
以上3点から、発生回数・入力強さ・抵抗力を評価して、PML値を決めています。
地震PMLの利用のされ方
地震PMLは、最初は保険のために作られたもので、
保険業界で地震保険の保険引き受け可否判断や、保険料算定などに用いられている。
不動産業界では、不動産の将来の収益を予測するため、地震国日本においては地震リスクを評価する指標として地震PML が用いられています。
不動産証券化の際に地震 PML が一定の値(再調達価額に対する割合)を超えている場合、地震リスクが大きいと判断されて地震保険の購入や準備金の積み立てが求められる。
不動産業界での動きに合わせて、近年は建設業界でも設計依頼時に事業主から設計者へ地震PMLの算出を求めるケースも増えていて、今後もその傾向が高くなることが予想されています。
地震PMLの目安
下表に地震PMLの目安をまとめました。
PML値が15%を超える場合には地震保険もしくはこれに代わる耐震改修等の実施を検討することがあるようです。
なので、いったんの目安は15%程度と考えるのが良いでしょう。
新耐震以降の建物で、PML値が15%を超えるということは少ないですが、
活断層付近など、地震活動が活発な地域においては、15%近い値になる場合もあります。
地震PMLを依頼する場合の相場
地震PMLを算出するためには、専門の会社さんにお願いすることになります。
地震PMLを算出には、設計図書だけから算出する場合や、実際に建物の調査までを行う場合、竣工年と建設地の住所の情報のみで算出場合など、段階が様々あります。
その段階ごとに、依頼時の費用は異なりますが、概ね50万円くらいを考えておけば良いでしょう。
地震PMLの注意点
地震PMLは数値として目安が提示されるため、その数値を絶対視してしまいがちです。
しかし、地震PMLは上での説明の通り、地震発生確率などが評価の要素として入っています。
様々な研究の結果をもとにはしていますが、
地震の発生確率を正確に把握できているわけではありません。
その点から考えると、地震PMLの数値が絶対的な数値ではないことが分かります。
データ公開は出来ませんが、以前REATに登録されている物件の熊本地震時の被害結果から地震PML値算出してみた結果と、机上で想定されていた結果を比較した、結果を見たことがあります。
結果は、値が近いものもあれば、全く違うものあるという感じで、PML値の妥当性を示せた結果とはなっていませんでした。
これは、実際に被害想定した物件数が少なかったことがズレの要因として大きいかと考えています。
確率論なので、母数が小さいと結果は机上と遠くなる可能性が高まります。
そういう意味で言うと、ご自身が不動産投資する際に、
1物件について地震PML値を気にしすぎるのはあまり意味がありません。
複数物件を対象にポートフォリオ全体で地震PML値がどの程度にあるかを考える方が良いでしょう。
ただ、個人で所有する不動産の個数に対して、地震の不確実性が高い為、過敏に地震PML値を気にすることは、やはりあまり意味がないと言えるでしょう。
それ以外にも、「新築時の建設費」に外構費用や設備費用などが含まれているのか、いないのかでも数値が変わりますので、ご自身のポートフォリオの参考にされる際には、前提条件がそろっているかを確認することも重要です。
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