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コンクリートひび割れを減らす有効な方法:単位水量制限だけではダメ!?

コンクリートのひび割れの要因のひとつに乾燥収縮がある。

乾燥収縮の抑制について、多くの技術者が真っ先に思い浮かべる方法は単位水量の低減でしょう。

ところが、最近の研究では、単位水量低減による乾燥収縮ひずみの低減は限定的であり

これだけでは、乾燥収縮によるひび割れを防止することは出来ないことが分かってきました。

今回は、最新の研究の知見も合わせて、コンクリートのひび割れ制御に有効な方法について解説します。

この記事を読めば、
コンクリートのひび割れに有効な対策を考えるヒントがつかめます

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目次

単位水量低減の効果

単位水量低減による乾燥収縮ひずみの抑制は、古からの定説であり、一般常識と捉えている技術者も多いです。

実際にJASS5でも単位水量の上限値は185kg/m3と規定されており、

より高品質なコンクリート性能を求められる場合は、単位水量を175kg/m3に低減するなどを行ってきました。

ところが、下図に単位水量と乾燥収縮率の関係を示します。

出展:コンクリートの新知見 ひび割れトラブル完全克服法 日経BP

単位水量の低減が乾燥収縮率を抑制するのであれば、グラフは右肩上がりになるはずなんですが、

実際にはそのようなはっきりとした相関関係は見られません。

なんとなく似たような位置にあるし、ばらつきも大きい。。

仮に175kg/m3と設計図に記載し、その通り施工しても、実際の生コンの乾燥収縮率は450μから1200μの幅があり、

例えば、JASS5の長期・超長期に求められる800μなどの、狙った性能が発揮される保証はないことが分かります

乾燥収縮率の決め手は粗骨材

粗骨材の品質がコンクリートの乾燥収縮特性に及ぼす影響が明らかになってきています。

粗骨材については、実は以前から、コンクリートの収縮特性に影響があることはわかっていました。

そういったこともあり、やはり単位水量管理の観点から、表面水管理などは従来から行われてきていました。

一方、2000年代後半から様々な研究で骨材の種類や産地によって収縮率に大きな違いがあることが明らかになってきました。

それらの研究からは、コンクリートの乾燥収縮は、粗骨材のそのものの収縮に起因するものが大きいとされています。

その中で、最も収縮に対して、有効とされているのが石灰岩です

粗骨材の収縮の要因は、内部の微細な空隙構造によるものと指摘されていますが、

石灰岩は空隙が少なく、硬度も安定した内部構造をしていることがわかっています。

これらのことが明らかになってからは、

大手ディベロッパーは石灰岩を使用を仕様書に組み込むなどの動きも取られています。

考えたい現実的な対応法

石灰岩を粗骨材に使用することが、乾燥収縮に有効であることがわかりました。

しかし、地域的に石灰岩が取れないプラントがあることや、

生コンは協同組合による共同販売が一般的であることから、

常にひび割れに対して理想的なコンクリートを得られるわけではありません。

そういった中で、どのような対応が現実的かを考えてみたいと思います。

・工場ごとに乾燥収縮率データの把握

・打設部位の使い分け

・膨張剤の利用

・打設時期の調整

工場ごとに乾燥収縮率データの把握

コンクリートの乾燥収縮率は工場ごとに、バラツキが大きいことが分かっています。

そのこともあり、近年は、自社のコンクリート性能を提示するために、事前に試験を行うことでデータを確保・提示する準備があるプラントも多いです。

要求性能が特にない場合でも、乾燥収縮率が1200μを超えるようなコンクリートは、

目地や配筋量によりひび割れをコントロールしても、

微細なひび割れが多数発生する為、美観を求められる部分では使いにくくなります。

仕上げで隠れるような場所に、そういったコンクリートを使用できるように、

まずは使用するコンクリートのデータを把握することが重要です。

必ず、プラントにコンクリートの性能を事前に提出してもらうようにしましょう。

打設部位の使い分け

生コンは協同組合からの購入となるので、特定工場から施工者が直接購入することはできないのが一般的です。

そういったことを考えると、出来る努力としては、施工者側で打設部位を使い分けるなどが考えられます。

例えば、

基礎や地下構造の部材は、外気にさらされることがなく、乾燥しなことが多いです。

また、美観的にもひび割れが許容されることが多いです。

耐久性という意味でも二酸化炭素や酸素の供給が少なく、中性化の進行や鉄筋腐食も遅いです。

その為、乾燥収縮率が大きい材料を使わざる負えない時は、

基礎や地下構造の部材へ使うことで、リスクを最小化出来ます。

また、一階の床スラブは、温度収縮の影響を受けやすいため、乾燥収縮の大きなコンクリートをなるべく避けるのが良いでしょう。

協働組合との協議による打ち込み部位の調整により、現状の流通システム枠組みの中での努力が求められる。

膨張剤の利用

膨張剤はコンクリートのひび割れに有効な材料として知られています。

膨張剤のメカニズムは、硬化初期にコンクリートを膨張させることで、その分を「貯金」として、その後の収縮を緩和するというものです。

膨張量は凡そ200μ程度で、平均的なコンクリートの収縮率800μの約4分の1ほどです。

正しい利用法であれば、効果的にひび割れを抑制することができます。

打設時期の調整

コンクリートの収縮には、乾燥収縮のほかに、温度収縮があります。

温度収縮の中でも、気を付けたいのが、季節の外気変動の影響です。

ご存じの通り、物体は、冷たければ収縮し、暖かければ膨張します。

コンクリートでも同じ現象が起こるのですが、これが打設時期により、影響度が異なります。

出展:コンクリートの新知見 ひび割れトラブル完全克服法 日経BP

上記の図のように、コンクリートの温度収縮は、半年程度の短い期間で最大を迎えます。

乾燥収縮が30年ほどの長期期間で進行するのに対して、急激に進行するわけです。

コンクリートを夏場に打設すると、その冬にコンクリートが急激に収縮してしまい、トラブルの要因になります。

一方、冬場に打設したコンクリートは、夏場膨張し、その次の冬場での収縮リスクを低減してくれます。

PJ全体スケジュールに関わるため、打設時期を大きくずらすことは難しいですが、

夏場に打つコンクリートの場合は、出来るだけ乾燥収縮率を抑えたコンクリートとするなどの工夫が可能です。

まとめ

単位水量の低減によるひび割れ抑制効果は限定的

乾燥収縮については、粗骨材の影響度が大きい

粗骨材に石灰岩を使用することが乾燥収縮低減に有効

工場ごとの乾燥収縮率を把握し、使用箇所、添加剤の活用、打設時期の調整によりひび割れを抑制

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